シルバー・ストリークについて
成形不良の原因の一つがシルバーである。
正式には「シルバー・ストリーク」と称すが、通常はシルバーと呼んでいる。
シルバーの原因は樹脂内に在る気泡が原因であるが、
可塑化時にシリンダー内にもともと存在する物と、様々な理由で気泡が射出時に発生する又は気泡が混入する事が原因である。
1、シリンダー内にもともと存在する気泡
シリンダー内に存在する気泡は基本的に材料投入口から材料と一緒に入り込んだ
空気と考えられる。
この場合の対処方法は、計量速度を下げる方法と計量時の背圧を上げる
方法が取られる。
樹脂が可塑化していく段階で空気が巻き込まれる現象を防ぐ方法は
いったんシリンダーに入った空気を材料投入口より外に出してやる事が
必要であるが、順序として背圧を上げる事が最大の改善策となるが、それでも残る場合は
計量速度を下げると良い。
2、気泡が成形時に発生する場合
1の場合の気泡は大気であるのに対して、2の場合は樹脂が可塑化する
段階で発生するガスや乾燥不足による水蒸気と考えられる。
樹脂材料のベースが石油である事から、材料を加熱し可塑化を進める段階で
必要以上に熱を加えると気化が発生しガスとなる。
ガスの発生し易い材料と発生しにくい材料とがあり、
単純な物ではないが基本的な考え方は熱の掛けすぎとなる。
通常の対策としては設定樹脂温度を下げるというのが一般的であるが、
この対策だけでは解決しない場合も多く存在する。
例えばゲート口から高速・高圧の樹脂が流れ込む場合、
ピンゲートやトンネルゲートのようにゲート口が比較的に小さい場合などは
ゲートを通過する抵抗で樹脂が高温になる。
測定したところ、材質にもよるが約50℃~100℃の樹脂温上昇が起こる。
これだけの温度上昇は樹脂を分解させ、ガス発生の原因となる。
特にこの現象は少数ゲートで製品が大きなものに起こる現象で、
ゲート口から放射線状に細かなシルバーが発生する。
1の原因のシルバーと見分けがつきにくいので注意したい。
判別方法として蛍光色の顔料は熱に弱い性格があり、この材料を使用してみると
ゲート口では発色が飛んでしまうようであれば原因がはっきりする。
この様な状況では材質にもよるが、ゲート周りの樹脂は分解して
本来の物性が得られない事になる。
特にゲート口には射出時の残留圧力も加わり非常に危険な
部位を形成しやすいので注意が必要である。
対処方法はゲート径を大きくするか、型温度を高めて射出抵抗を落とす事がよい。
ゲートの数量を増やす事も対策となる。
3、気泡が射出時に混入する場合
射出される樹脂は大気に触れて型内を進んでいく
大気ではそれ程冷やされないが、型面に触れると即座に冷却を開始する
問題は樹脂の流れが型内で正しく(表現が難しい)進んで行き
常に溶融樹脂が流れの最先端に来る事が必要であるが、
近年のスーパーエンプラのように溶解温度と固化温度が近接している
ような樹脂ではこの様な状況にならない場合が多い。
そのような場合はランナーや製品形状によって空気の巻き込みがおき
それがボイドとなりシルバーとなるケースである。
ボイドは製品内部に発生し、成形時にボイドが製品表面に出ると
シルバーとなる。
対処方法としては空気を巻き込まないランナー形状、製品形状に
変更する方法が取られるが、高度なノウハウがある。
最近、「真空成形」という加工方法が開発されているが
製品形状の変更なしで改善する最適な方法である。
射出前に型内の空気を抜き減圧して射出する手法であるが、
完全に真空とはいかず、突出しピンやスライド駒のシールで耐久性に
疑問があるため、あまり普及していない加工技術である。
3の対策として金型構造、製品形状、ランナー形状、成形技術の総合技術で
対応する難しい対処となる。