ヒートアンドクール工法の考察
近年、ヒートアンドクール工法が注目を浴びている、
金型の温度を射出時に上げ、直後に冷却し製品を作るといった
考え方である。
加熱に蒸気や電気的なヒーターが使われているが、
急速冷却を行なう必要があるため金型の温調に工夫が必要となる。
ヒートアンドクール工法でのメリットは型の転写性に優れている点である。
射出時に型温度を上昇させる事による型の転写性は優れているが、
このままの状態で冷却させると長い時間冷却が必要となり、
現実的でないため、金型を冷却し成形サイクルを短くするのである。
とはいえ通常の成形と比較して成形サイクルは長くなるが、
高品質な外観が必要な製品には適応する。
しかし成形で形成される硬度のスキン層がヒートアンドクール工法では強く形成されず
表面硬度が落ちると考えられるため、傷つきやすい問題が残るが、
製品リサイクルの面では有効な工法といえる。
懸念材料が数点ある。
①急速加熱、冷却を繰り返す必要があり、当然金型は膨張、収縮を繰り返す
その事によりプラスチック金型の利点である複雑な構造が耐えられるかと言う事である。
安定的な金型温度であれば金型の製作時や打ち込み時に
調整を加えて安定させる事も可能であるが、
この工法でははるかに超える過酷な条件が金型に課せられる。
実成形品を見る限りではパネルの様な形状が多いのはこの事が原因だと推測される。
②この工法での最大の問題点はゲートシールの時期である。
樹脂を金型内に射出し、保圧を掛けて製品寸法、ヒケやソリを抑える
のであるが、通常の成形の場合冷却は製品表層から始まり、
ゲートより遠い内層が徐々に固化され最後にゲート付近が固化する
この流れの中で固化・収縮した材料を補充する意味合いが保圧にある。
ゲートシールが行なわれていない状況では収縮した材料に新たに
材料を足す事が出来るのでヒケやソリが制御できるのである。
この工法では表層の固化と内層の固化がほぼ同時に行われる。
また、金型冷却がスタートすると同時にゲートシールが起こり
保圧を掛けら難い状況になる。
この事からパネルのような形状に向いており、リブ形状や偏肉形状では
ヒケやソリの問題は通常成形以上に発生する。
ヒートアンドクール工法と弊社のIMP工法を併用する事により
より優れた外観をもつ製品が出来ると思う。
これに関しては時期を見て開発に着手する予定である。
③ウエルドライン強度の問題である。
繊維状添加剤(ガラス繊維強化材)入りの材料の場合、
繊維配向は通常成形と同様である為、
この工法では解決は出来ない。
また、スキン層の形成が通常成形と比較して劣るために製品全体の強度低下を招く。
添加剤の入っていない材料(ナチュラル系)でのウエルドラインの強化、
外観上の線は消す事が出来る。
ヒートアンドクール工法ではこの事を理解して検討する必要があると思う。