ヒケの改善方法
ヒケの主原因は溶融樹脂が固化する際に発生する体積収縮ですが、そのバランスが崩れることで、製品表面に凹として現れます。ヒケは目視で認識することが多く、光沢面の製品ではヒケが強く感じられ、シボなどの表面処理をしている製品などはヒケを感じにくい傾向になります。
改善方法は、先ずこのバランスの崩れを理解する必要はあります。
<バランスの崩れの要因>
- 充填圧力の差(ゲートは充填圧力が高く、反ゲート側は低い傾向にあります)
- MD/TD方向の収縮率の違い(ガラス繊維等添加剤が入った材料によく見られる現象です)
- 製品の肉厚差の違い(樹脂は肉厚により収縮率が変化する傾向にあります)
- 金型温度の差(製品形状や金型の冷却設計により生じる金型表面の温度差)
- キャビ内の樹脂充填時に発生する逃げ場を失った圧縮された空気
- スキン層/コア層の収縮率の差や厚さの差
- 形状由来の剛性の差
これらが主たる要因でヒケが発生します。
一般的には充填圧力を高く保持することで、ある程度は解決すると言われていますが、
この対策は上記1のみの対策です。
1~7を十分に理解し、主原因がどこにあるのか等を正しく判断して対策に挑む必要があります。
<製品設計>
ヒケを発生させない製品設計の特徴として、先ず製品の肉厚を比較的薄く、均一にする事です。 その上で圧力損失の発生する可能性のある部位の肉厚を更に薄くする必要があります。 圧力損失の発生する部位はゲート位置、金型の構造などが理解されていないとなりません。 対策の3項目共に抜本的な解決方法とはなりません。2-1は一定のレベルのヒケに対して有効です。多くの成形業者はこれと同じ事を行って対策しておりますが、 対策方法としては限定的です。 2-2、2-3は強制的に内部にボイドを発生させる手法ですので、 強度という観点を無視した考え方であり、注意が必要です。根本的にはシミュレーションソフトを使い製品形状をチューニングすると良いでしょう。
<IMM工法によるヒケ改善方法>
一般的には充填圧力不足部位や厚肉部位にヒケが強く発生します。改善する方法は上記に記載の通りですが、充填圧力を長時間高めるためにゲートシールを遅らせることが一番効果的です。そのためにはゲート径・ランナーを太くする もしくは金型温度を極端に高める方法での対策は、コスト上昇の要因となり、あるレベルを超えたヒケ対策の場合は取り入れ難い手法です。その点、IMM工法はヒケが発生する部位に直接圧縮を加えることが出来るためにヒケ対策が必要な部位に直接届く保圧効果が在り、高度なヒケ対策が行えます。ゲート径や金型温度の変更が不要となり、大幅なコスト上昇を防ぐ効果があります。